虫歯の痛みは顎にまで広がり、日常生活に支障をきたすことがあります。なぜ、虫歯が原因で顎が痛くなるのか、疑問に思われる方もいるでしょう。
また、ほかの要因によって顎の痛みが生じている可能性もあります。
この記事では顎が痛くなる原因や、痛みを感じたときの対処法などについて解説します。顎の痛みでお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
虫歯で顎が痛くなる原因
虫歯で顎が痛くなる原因は、進行した虫歯によって細菌感染や炎症が生じるためです。虫歯が進行すると、歯根の先端や顎の骨にまで炎症が広がることがあります。
歯の内部にある歯髄は、歯根の部分まで血管でつながっており、虫歯による炎症が歯根に広がることで、顎骨にまで影響を及ぼします。顎骨が炎症を起こすことを顎骨骨髄炎といい、前触れなく突然痛みを引き起こすのが特徴です。
また、虫歯の進行によって歯根嚢胞が形成され、周囲の骨組織を圧迫することにより顎に痛みが生じている場合もあります。
顎の痛みが虫歯にある場合は、まず虫歯治療を最優先で行わなければなりません。放置することで細菌感染や炎症が悪化し、身体への悪影響につながるおそれがあります。
虫歯以外で顎が痛くなる原因
顎の痛みの原因は、虫歯だけではありません。次のような要因によって生じている可能性もあります。
- 顎関節症
- 歯周病
- 親知らずの抜歯
- 歯茎や顎骨の腫瘍
- 口腔顔面痛
それぞれの原因を確認していきましょう。
顎関節症
顎関節症とは、耳の穴の前あたりにある顎関節や顎を動かすための筋肉に、痛みや違和感が起こる疾患のことです。口が大きく開けられない、関節から異音が聞こえるなどの症状がある場合は、顎関節症が疑われます。
顎関節症が進行すると、耳やこめかみ、顔全体などに痛みを感じ、頭痛や肩こりなどの症状を伴うことも。放置すると関節の損傷や変形が生じるリスクもあるため、当てはまる症状があれば早めに受診しましょう。
歯周病
歯周病とは、歯を支えている周りの組織が細菌によって炎症を起こす病気です。歯周病が進行すると、歯を支えている顎の骨に悪影響を及ぼします。この状態がさらに悪化すると、細菌が骨の奥深くまで入り込み、虫歯と同様に顎骨骨髄炎を引き起こすこともあります。
なお、歯周病が進むことで歯周ポケットが広がり、細菌の増殖を助長してしまうことも要因の1つです。歯周病を予防するためにも、定期的な歯科検診と正しい歯磨きで口腔環境を整えるようにしましょう。
親知らずの抜歯
親知らずとは、一番奥に生える永久歯のことで「第三大臼歯」と呼ばれます。まっすぐに生えることは少なく、斜めに生えてくることや埋まった状態であることが多いのが特徴です。親知らずによって生じた磨き残しが原因で、智歯周囲炎と呼ばれる炎症を引き起こすこともあります。
また親知らずの抜歯は、歯周病や虫歯のリスクを軽減できますが、抜歯後に顎の痛みを感じることも少なくありません。抜歯後に生じた痛みは通常数日でよくなりますが、痛みが強いときや長引いている場合は、何かしらのトラブルが疑われます。
抜歯部位に細菌が感染し、炎症を起こしている可能性もあるので、医療機関で早めに相談することが大切です。
歯茎や顎骨の腫瘍
歯茎や顎骨にできる腫瘍には、良性のものと悪性のものがあります。良性腫瘍の場合は、ほかの組織に広がることはありませんが、肥大することで顎の痛みを引き起こします。
悪性腫瘍はほかの組織に広がる可能性があり、早期発見と速やかな治療が重要です。いずれの場合も医療機関で適切な処置を受ける必要があるでしょう。
歯茎や顎骨に腫瘍ができる原因は解明されていませんが、遺伝要因にくわえて生活習慣や環境要因が関係すると考えられています。
口腔顔面痛
口腔顔面痛とは、虫歯や歯周病などの明確な原因となる病変がないにもかかわらず、口の中や顔面、顎などに痛みを感じる状態です。原因はさまざまあり、原因ごとに対処法が異なります。
口腔顔面痛は身体的な原因だけでなく、ストレスのような心因性の場合もあります。原因の特定が難しいため、医療機関を受診して適切な治療を受けることが大切です。
顎が痛いときの対処法
顎が痛いときは、次のような対処法を取りましょう。
- 患部を冷やす
- 口腔内を清潔にする
- 痛み止めの薬を服用する
- 医療機関を受診する
それぞれ詳しく解説します。
患部を冷やす
顎が痛むときの応急処置として、痛みを感じる部分を冷やすと苦痛が和らぎます。ただし、冷やしすぎると血行が悪くなるため、10分程度を目安としてください。
なお、氷を食べて口の中を冷やすのは避けた方がよいです。進行した虫歯が原因である場合は、余計に強い痛みを感じることがあるためです。
冷却は根本的な原因を解決する方法ではなく、一時的な痛みを和らげる対処療法です。痛みが続く場合は、医療機関にかかりましょう。
口腔内を清潔にする
細菌感染や炎症が原因である場合は、口の中を清潔に保つだけでも痛みの改善につながります。口腔内が食べかすや歯垢で汚れていると、細菌が増殖して炎症が悪化するおそれがあるため、清潔にしておくことが大切です。
毎食後にていねいな歯磨きとうがいを行い、清潔な状態を保つようにしてください。
痛み止めの薬を服用する
口の中を清潔にし、冷やしても痛みがおさまらないときは、痛み止めを服用することで苦痛を和らげられます。痛み止めの中でも、抗炎症作用を持つ薬であれば、炎症も抑える効果があります。
ただし、薬で一時的に良くなったとしても、治ったわけではないため注意が必要です。既往歴やアレルギーによっては副作用のリスクもあります。長期間の服用は避け、医師や薬剤師に相談しましょう。
医療機関を受診する
顎の痛みが続いているときは、無理せず医療機関を受診しましょう。歯根や顎の骨に炎症が生じている場合は、応急処置をしていてもよくなりません。
我慢できるからと放置しているとさらに症状が悪化し、全身の不調につながるおそれもあります。原因によっては、深刻な病気が潜んでいるかもしれません。
できる限り早めに医療機関を受診して原因を特定し、適切な治療を受けるようにしてください。
顎が痛いときに避けること
顎が痛むときは、顎関節に負担をかけないことが大切です。次のような行為は、顎関節に負担をかけるため避けましょう。
- 無理に口を開けたり閉じたりする
- ガムや硬いものを噛む
- 片側ばかりで咀嚼する
- 歯を食いしばる
- 激しい運動を行う
- うつ伏せで寝る
- 頬杖をつく
また、熱い飲み物は顎骨骨髄炎の炎症を悪化させることがあります。顎を休ませることを意識して過ごしてください。
顎の痛みを感じたら早めに受診しましょう
顎の痛みの原因は虫歯だけでなく、歯周病や顎関節症など多岐にわたります。抜歯後の一時的な痛みであれば、患部を冷やしたり痛み止めを飲んだりといった対処で痛みを和らげることが可能です。
痛みが続く場合は、適切な治療を受けるためにも、できる限り早く医療機関に受診することが大切です。顎の痛みでお悩みの方は、ぜひ一度さくら歯科へご相談ください