インプラント治療は、自分の歯をすべて失ってしまった方も元の歯のように人工歯を埋め込み、自然な噛みごたえや見た目が手に入る治療方法です。
治療全体では半年〜1年程度の期間がかかりますが、治療が終わったあともこまめにメンテナンスを継続する必要があります。
この記事では、治療から数年後に痛みが発生するケースについて、考えられるトラブルの例や対処法、予防法について紹介します。インプラント治療を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
インプラント治療の数年後に痛みが出る原因
インプラント治療から数年後、治ったはずの治療箇所に痛みが出る場合があります。お口の中の状態は日々変化していますから、原因をチェックして常にお口の中はきれいに保たなければなりません。
ここからは、インプラントの治療後に痛みが発生する場合、以下のような原因が考えられます。
【インプラント治療の数年後に痛みが出る原因】
- インプラント周囲炎
- 嚙み合わせの変化
- インプラントの周囲にある歯のトラブル
- インプラントと骨の間のヒビ
- アバットメントのネジの緩み
インプラント治療から数年後は、上記のような原因によって治療箇所に痛みが出る場合があります。詳しく説明します。
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インプラント周囲炎
インプラント周囲炎とは、インプラントを埋め込んだ部分の周囲を取り巻く歯茎(歯肉)に歯周病が及び、炎症が発生する症状です。
歯から歯根までを失ってしまった方でも、歯肉はご自身の組織のままですから、インプラントを埋め込んだ後も歯周病のリスクが伴います。
歯と歯茎の隙間には細菌が溜まりやすいため、常に清潔にしておきたいところですが、なかなか手入れが行き届かなければ汚れと細菌が蓄積していきます。
インプラント周囲炎にかかると、インプラント周りの歯茎が腫れてきて出血や赤み、ぶよぶよとした手触りに変化していきます。膿が出てインプラントがぐらついてくると、歯茎がインプラントを支えられなくなってしまいます。
噛みあわせの経年変化
嚙みあわせの経年変化とは、インプラントを埋め込んだ部分と反対側の歯とのバランスが変化し、インプラントに余分な力がかかってしまう状態です。
それ自体病気ではありませんが、嚙みあわせが変化したために、当初は問題なかった自然な噛み心地が痛みや不快感を伴うものに変わってしまう場合があります。
人間の歯は通常、咀嚼に50kg以上の力をかけるといわれています。インプラントと健康な歯の間のバランスが乱れると負担がさらに大きくなり、インプラントの破損やぐらつきが発生しやすくなります。
インプラントを埋め込んだ周囲の歯のトラブル
インプラントは歯根から上部構造まですべてが人工歯のため、それ自体が虫歯にかかる心配はありません。
しかし、人工歯だからといってケアを怠ってしまうと、インプラントの周りの歯周組織に歯周病などが及び、「インプラント周囲炎」と呼ばれる病気にかかりやすくなります。
インプラント周囲炎は歯茎の腫れや出血を起こし、膿が溜まってきて張りを失い、次第に歯を支えきれなくなってしまいます。
インプラントと骨の間のヒビ
人工歯であるインプラントは、上部構造が直接ものを噛むために使われます。セラミック(陶材)などでできているものは、過度に力をかけると割れを起こし、衝撃によって痛みを感じる場合があります。
また、上部構造を通じて歯根部分のインプラント体にも力がかかるため、インプラント体の経年劣化や骨の強度によっては、どちらかにヒビ割れが発生するおそれもあります。
目に見える部分にヒビ割れがあればすぐに対処できますが、奥深くで発生したヒビ割れは検査のうえ、割れた骨とともに取り出さなければなりません。
アバットメントのネジの緩み
アバットメントは、インプラント体と上部構造を繋ぐ部品です。インプラント体と同じく金属でできている部品であり、簡単に破折する心配はありませんが、度重なる噛み締めによって金属疲労が起きることがあります。
金属疲労に強い力が加わると、しっかりと締めたアバットメントが少しずつ動きます。そして歯と歯根の境目に緩みが生じ、歯のぐらつきや痛み、噛みあわせの変化が出てきてしまうのです。
ネジ以外にも、アバットメントを接着剤で固定する方法もあります。この場合は接着剤の剥がれによって固定力が失われやすくなるため注意が必要です。
10年前や20年前に入れたインプラントのトラブル例もある?
インプラントの寿命は、一般的に10〜15年程度です。メンテナンスの頻度やお口の中の状態にもよりますが、10年を超えてからインプラントがトラブルを起こすケースも確認されています。
一例として、10年前に奥歯3本をインプラントにした患者さんが、3本のうちの1本に痛みを感じるようになったケースが挙げられます。
年数が経ったインプラントの不具合は、歯周病菌による炎症・インプラントの緩み・インプラントの不具合などいくつかの原因が考えられるため、レントゲンなどの画像診断や専門医による検査によって判断されます。
治療から数年後に感じる痛みの予防法と対処法
インプラント治療は、歯があった場所に人工歯を建てて終わりというわけではなく、アフターケアやメンテナンスが重要です。
数年後になってから痛みを感じないように、ここからは予防法と対処法について確認していきましょう。
日々のブラッシングを徹底する
まずはインプラント周囲炎を予防するために、日々のブラッシングを徹底しましょう。
歯磨きは基本的に飲食をした後、時間をおかずに行います。1日1回だけではなく2回以上、食事をするたびに軽く磨くようにして、歯と歯茎に付着した汚れを落とすように心掛けてください。
歯と歯茎を傷つけるおそれがあるため、ブラッシングは力をかけないように注意します。歯ブラシは小回りの効くものを使い、外出先にも持ち歩くことをおすすめします。
定期的なクリーニングを受ける
自宅でのケアだけでは汚れを落としきれない可能性があるため、定期的にかかりつけの歯科医院でクリーニングを受けましょう。
クリーニングでは、歯垢や歯石の除去・歯の磨きあげ・歯間用フロスによる細かい汚れの除去を行い、全体的に汚れを落とします。
歯科医院の定期検診も忘れずに受ける
歯科医院ではクリーニングだけではなく、インプラントや詰め物・被せ物の検査も定期的に行ってください。
お口の中に歯肉炎や歯周病の症状が発生していたら、インプラントを埋入した部分にも炎症が及ぶ可能性が考えられます。将来的なリスクを踏まえてお口の中がケアできるので、1〜2ヶ月に1度は定期検診を受けてみてはいかがでしょうか。
関連記事>>歯医者の定期健診って行った方がいい?その理由とメリットを知ろう
違和感があれば即受診する
メンテナンスや定期検診以外にも、違和感がある場合はすぐに歯科医院を受診してください。インプラントを埋入した病院に限定する必要はなく、かかりつけ医や身近な場所にある歯科医院にも通院できます。
受診予約の際、まず「インプラントを入れたが痛みがある」ことを伝え、次に痛みの原因として考えられること(夜中に歯ぎしりをする癖があるなど)を伝えると、その後の治療計画が立てやすくなります。
インプラント周囲炎の治療法
インプラント周囲炎は歯周病の一種で、進行度に合わせて治療を行います。汚れがほとんどない状態〜軽度であれば歯の表面から歯と歯の隙間にかけて清掃し、研磨をするだけで汚れが取り除けます。
中等度以上は、すでに上部構造とアバットメントの間を中心に歯垢や歯石が溜まっている状態です。歯茎の腫れも激しく、痛みや違和感があるため、抗菌療法として抗生物質を服用して腫れを沈めます。患部の汚れは洗浄剤を使って洗い流し、滞留した歯垢を清掃器具で落としながら、重度にならないように予防します。
重度の周囲炎は、すでに歯茎の奥にまで歯周病菌が入り込んでしまっている状態で、歯茎の切開が必要です。
そのままでは歯周ポケット内の汚れが取り除けないため、麻酔をかけて歯肉を切開し、インプラント体も露出させてきれいに殺菌消毒をします。器具を使って表面の汚れを落としながら、インプラント体に付着した肉芽などの歯周組織も取り除きます。
インプラントを長持ちさせるメンテンナンス方法
インプラントを長持ちさせるためには、こまめなメンテンナンスが必要です。歯ぎしりの癖がある方はマウスピースを使って歯にかかる負担を軽減させるなど、インプラント治療以外の対処法とも組み合わせましょう。
歯茎を常に健康に保つことも、インプラントの長持ちに繋がります。周囲炎だけではなくお口の中全体の歯周病や虫歯にも注意し、毎日のデンタルケアと歯科医院でのクリーニング・定期検診を継続してください。
こまめなケアが長持ちに役立つ
今回は、インプラント治療の数年後に痛みが発生する理由と予防法、インプラント周囲炎の治療方法について紹介しました。
インプラントを埋入してから抜歯するまでは痛みがありますが、時間の経過とともに治癒するため、痛みは軽快します。 しかし、歯の使い方やお口の中のトラブルによって10〜20年後に痛みが出るケースもみられますので、毎日のデンタルケアとかかりつけ医の受診で効果的に予防を行いましょう。
明大前駅のさくら歯科では、患者様の状況に合わせた治療を提案させていただきます。ぜひお気軽にお立ち寄りください。
さくら歯科では治療にあたっての不安や疑問に対して丁寧にお答えいたします。ぜひカウンセリングにて、不安に思われていることをご相談ください。
また、駅から徒歩1分という立地と、急な歯の痛みによる当日アポも承っておりますので、明大前駅のインプラント治療ならさくら歯科へご連絡ください。