虫歯が割れた・折れたなどの症状を抱えている方に、原因と応急処置法、治療方法の費用や通院期間をご紹介します。
虫歯は一般的な歯科疾患ですが、実は「虫歯で歯が割れる・折れる」ことがあるのをご存じでしょうか?治療をせずに放置しておくと、進行して歯肉の下から折れてしまうこともあります。
初めて虫歯が割れたり折れたりした場合、治療はできるのか、治療に痛みはあるのか…など、さまざまな不安があることでしょう。そこで今回の記事では、虫歯で歯が割れたり折れたりした場合について詳しく解説します。
ご覧いただければ、折れたり割れたりしたときの応急処置や治療方法、治療費用などがおわかりいただけるはずです。今お困りの方はぜひ参考にしてください。
目次
虫歯が折れた・割れた際の症状
虫歯が折れた・割れたときは、「歯根破折」と呼ばれる状態になります。
歯根破折とは虫歯の根本にある、歯茎に埋まった部分が割れることです。歯根破折は虫歯や歯周病が原因で引き起こされることが多いと言われています[1]。
虫歯が根本から割れたケースでは、歯茎より下まで症状が及んでいることが多いものです。虫歯が歯茎より下まで及んだ場合は抜歯を行うことがあります。そして残された歯根に義歯を装着する治療をおこないます。
歯が折れる・割れる原因
虫歯によって歯が折れた・割れた状態になることは多いものです。しかし最初に解説したように、原因は虫歯だけではありません。よく見られる4つの原因について見ていきましょう。
原因1:外傷
まずは歯が外傷を受けたときです。歯に外からの強い力が加わると、衝撃に耐えきれずに歯が割れることがあります。たとえば交通事故に遭い口元をハンドルにぶつけたり、転倒で打ったりしたときなどが一例です。
外傷を受けた際には歯茎から上の部分の歯が割れることもあります。しかし、場合によっては歯茎より下にある歯根まで折れてしまうこともあり、さらに脱臼することも考えられます。外傷は歯が割れる原因として代表的なものです。
原因2:虫歯
最初に解説したように、虫歯で歯が割れた状態になることも少なくありません。虫歯が歯茎より下で進行すると歯根破折を招き、歯が割れることがあるためです。しかし、虫歯の治療で歯の神経を抜いたことで、歯が割れやすくなることもあります。
重度の虫歯では、治療の一環として神経を抜かなければなりません。しかし、歯の神経を抜くと歯の内部は空っぽの状態です。いわば表層だけの歯になり空洞ができるため、強度が低下して割れる確率が高くなります。
【関連記事】虫歯になりやすい歯・虫歯になりやすい場所と効果的な予防方法3選
原因3:金属の土台
歯の内部に金属の土台が入っている場合も歯が割れやすくなると考えられます。金属の土台は虫歯治療の一環として入れられることが多いものです。
強度の高い金属の土台が入れられていて、噛む力がそれほど強くない場合は問題ないでしょう。しかし反対に強度の低い金属で作られた土台を使っていて、噛む力が強いときに歯が割れやすくなります。なぜなら咀嚼によりかかった力が周囲の歯に分散されるためです。
金属の土台による歯の割れも歯根破折であることがほとんどとなります。
原因4:歯ぎしり・食いしばり
最後に歯ぎしりや食いしばりなどの癖が歯の割れにつながることもあります。歯ぎしりや食いしばりにより歯にかかる圧力はとても強く、夜間であれば100kg以上とも言われているためです[2]。
歯に100kgもの圧力が加われば、歯の強度では対抗できなくなることもあります。知らず知らずのうちに行っている歯ぎしりや食いしばりが、歯が割れる原因となることも珍しくありません。
虫歯が折れた・割れた際の応急処置
それでは「虫歯割れた」「歯が折れた」との事態が起きたときの応急処置について解説していきます。本来ならすぐに歯科医院を受診するのが一番ですが、すぐに受診できない場合の対処法について見ていきましょう。
処置1:口内を清潔にしておく
虫歯やその他の歯が割れた・折れたときは、まず口内を清潔にすることが大切です。不衛生な状態にしておくと、割れた部分から細菌が侵入して状態が悪化する可能性があります。
ただし強くすすぐと刺激が強すぎることもあるので、優しく丁寧にすすぐようにしましょう。また折れた・割れた部分を手で触れないようにすることもポイントです。
処置2:出血していたら止血しておく
割れた部分から出血が見られたら、応急処置として止血をします。口内からの出血は気道の障害や誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があるためです[3]。
止血道具は滅菌済みのガーゼや、洗濯済みの清潔なタオルやハンカチが望ましいでしょう。もしなければティッシュペーパーでも構いません。出血している部分に10秒ほどあてがいながら圧迫して、出血が止まるまで続けましょう。
処置3:折れた歯を保管しておく
歯が割れたり折れたりしたときは、折れた歯のかけらを保管しておくようにしてください。場合によっては割れたり折れたりした歯を接着できることもあります。また治療に利用できる可能性もあるので重要なものです。
ただし虫歯で割れた歯を接着することはほぼできません。また粉々になってしまった場合も治療で活用できないことがあります。念のため保管されることをおすすめしますが、歯の状況によっては使えないこともあります。
処置4:痛い場合、鎮痛剤を服用する
虫歯が割れたり折れたりした際に痛みがあるようなら、鎮痛剤を服用して痛みを抑えましょう。口内が痛むのはつらいものですから、市販の鎮痛剤で痛みを緩和してください。
服用する鎮痛剤はどのような種類でも構いません。薬局やドラッグストアで市販されているものを使いましょう。
【関連記事】虫歯が痛い時の応急処置と注意すべきやってはいけない行動
虫歯が折れた・割れた際、NG対処法
虫歯が折れた・割れた際の応急処置について解説してきました。しかし、やめたほうが良い対処法もあります。ついしてしまいがちな対処法の中でも、やめていただきたいNGな対処法を解説しますので、正しい対処の参考にしてください。
1.歯が折れたところを触る
虫歯が割れたり折れたりしたときは、患部をなるべく触らないようにしましょう。応急処置の項目でも解説しましたが、手で触れると雑菌が付着することがあるので触れないのが無難です。
歯が割れたり折れたりしたら患部が気になるものですが、必要以上に触らないようにしてください。口内を清潔に保つことを一番に考えて、手で触れることは避けるようにしたいものです。
2.自分でくっつける
歯が折れた・割れたときに、ご自身で接着しようとするのは危険です。歯は市販のもので接着できませんし、雑菌が繁殖する恐れもあります。ご自身で接着しようとしたことで、治療による修復ができなくなることもあります。
稀に接着剤などで折れたり割れたりした歯を、ご自身で接着しようとされる方がいますが、接着剤では接着できませんし、治療を難しくしてしまうこともあります。
3.強くうがいをする
強くうがいをするのも避けたほうが良い行動です。虫歯などが割れた・折れたときは口内を清潔に保つことが必要となります。しかし、強いうがいは刺激が強く、歯茎よりも下にある歯根に悪影響を与えかねません。
もし転倒などで口の中の砂などが入っていても、口内を軽くすすぐくらいのうがいに留めましょう。なるべく患部に刺激を与えず、歯科医院を受診するのがおすすめの対処法です。
虫歯が折れた・割れた際の治療法
それでは最後に、虫歯が折れたり割れたりした場合の治療法について、治療期間や費用相場も含めて解説します。治療が必要となる症状ですので、歯科医院を受診する前に概要を知っておいていただければと思います。
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歯が折れた場合(小規模)
歯が折れた場合の治療法のうち、折れた部分がまだ小さく、簡単に治る場合は詰め物をして治療を行います。まず虫歯を完全に除去した後、歯科用のプラスチックを被せる方法です。場合によっては折れた部分を削って整形した後に、セラミックを貼り付けることもあります。
治療期間
小規模な治療法なので、通院回数は1~2回程度となります。
費用相場
治療費用の相場は2,000~5,000円です。料金は3割負担の保険診療で算出しました。治療内容は歯の状態によりさまざまに変わるため、治療内容により費用も変わります。
歯が折れた場合(大規模)
歯が折れた部分が大きい場合は、残っている虫歯を除去してから被せ物をします。虫歯が進行している場合には、除去の前に根管治療が行われることもあります。根管治療とは歯の神経の治療のことです。もし虫歯が進行し歯髄が壊死している場合は、歯髄を取り除くための根管治療が必要です[4]。
治療期間
もし根管治療が不要であれば、1~3回の治療で治ることも少なくありません。しかし、根幹治療が必要な場合は、4~15回程度の通院となることもあります。根管治療には10回程度の通院が必要となることもあるため、その分治療期間が延びます。
費用相場
根管治療が不要の場合は、保険適用診療で3,000~5,000円程度が目安となります。ただ根管治療をする場合は、20,000円程度になることもあるでしょう。
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歯が割れた場合
もし転倒などで先端部分だけが割れた場合は、割れた部分にプラスチックペーストをつけて先端の歯を接着します。ペーストは使用していると変色してきたり、再び取れたりすることもあります。根管治療を行ってから被せ物をしたほうが良いでしょう。
もし歯肉から下の部分で虫歯が割れた場合は、インプラントもしくはブリッジにて治療を行う場合があります。
治療期間
【治療期間・回数】
- ペーストで歯の先端を接着:1~2回
- 根管治療が必要な場合:4~15回程度
- インプラント治療:8~13回程度(4~8か月[5])
- ブリッジ治療:1か月程度
費用相場
【費用】
- ペーストで歯の先端を接着:33,000~110,000円
- 根管治療が必要な場合:5,000~20,000円程度
- インプラント治療:328,000~399,000円[6]
- ブリッジ治療:1本あたり10,000~100,000円程度
虫歯が折れた・割れたときは衛生を保ちすぐに受診を
いかがでしたでしょうか?この記事を読んでいただくことで、虫歯が折れたり割れたりしたときの症状や原因、応急処置法などがご理解いただけたと思います。
外傷や歯ぎしり・食いしばりで割れることもありますが、虫歯も歯が割れる原因のひとつです。もし割れた場合は手で触らず患部を清潔にし、できる限り早く歯科医院を受診しましょう。
明大前駅のさくら歯科では、虫歯の一般治療、歯科検診からインプラント、口腔外科まで幅広い治療を行っております。
患者様1人1人に真剣に向き合い、来院して良かったと思われるよう日々治療に励んでいます。
また、駅から徒歩1分という立地と、急な歯の痛みによる当日アポも承っておりますので、明大前駅の歯医者ならさくら歯科へご連絡ください。
[1]参照:JSTAGE:(PDF)垂直歯根破折の実態の接着治療の理論的背景
[2]参照:JSTAGE:(PDF)高齢者や認知症患者におけるめまいと歯ぎしり・食いしばりの関係
[3]参照:JSTAGE:(PDF)出血傾向を有する患者の口腔ケア
[4]参照:e-ヘルスネット:歯の神経の治療(根管治療)
[5]参照:栃木医療センター:インプラントセンター
[6]参照:朝日新聞出版.「いい歯科インプラント治療医」を選ぶ! 2013年;94号188頁